「説得と納得」心書vol.11

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「上司と部下という人間関係は説得と納得の連続だ。

 最後は上司が指示すれば良い。

 そうすれば、部下は従わなければいけない。

 だからこそ、上司は最後まで部下を説得し、納得させる努力をしないといけない。」

中間管理職になった時に勤め先の顧問の1人から言われた言葉だ。


私の部下はみんな15歳以上年上だ。

〝説得する〝というのはとてもハードルが高いと感じる時がある。

1番辛いのは自分の元上司を叱らないといけない場面があること。

この春、元上司が長年担当していた取引先から

取引をゼロにするかもしれないと言われてしまった。


前々から直近約1年間に取引額が減ったのは気になっていた。

元上司から理由を説明され、

『うーん。。。』

と思う自分がいたが、何もできずにいた。

気になりつつも、元上司のプライドを傷付けてはいけないと思っている自分がいた。

そんな時にあがってきた報告が

2社購買している内の当社以外のもう1社が

既に新たな価格提案をしており、

2社購買を1社購買にし、

年間億単位あった取引がゼロになるかもしれないという内容だった。

完全に出し抜かれたと思った。


上にも相談し、

最終的に私が仕入先へ協力をお願いしに行くことになった。

仕入先に後輩がいるという顧問に橋渡しをお願いし、東京へ出張した。

誠心誠意謝り、協力をお願いしたが、

仕入先の担当者も社内でかなり叱られたようだった。

得意先が希望するような条件は引き出せなかった。


2社購買を続けてもらうための資料をつくり、

最低限の取引額で継続してもらえることとなった。

結果、本案件の担当は元上司から私へ代わることになった。


先日、仕入先の担当者が代わられることになり、

新しい担当者の方と3人で得意先へ訪問した。

いつも大きな駅で待ち合わせするのだが、

以前、帰りに別の駅でおろしたことがあり、ずっと気になっていた。

元上司が担当していた頃だ。

気になって元上司に聞いたら、

理由は知らないがここ最近はいつもその駅まで送っているとのことだった。


ひょんなことから今回その理由がわかった。

仕入先の方はそのローカルな駅でタクシーをひろっていたらしい。

得意先からローカルな駅まで5分、大きな駅まで15分。

以前から元上司と仕入先の担当者が上手くいっていないだろうとは薄々感じていたが、

この10分を一緒にいたくないと思われるぐらいだったのだと思い知らされた。


商社の仕事は仕入先と得意先のどちらからも信頼されて、初めて成り立つ商売だ。

今回の出来事は、私が元上司を〝説得する〝と覚悟を決められなかったがゆえに起きたことだと思っている。

『これ以上、突っ込んだら嫌だろうな。』

と思ったのは、元上司に対する気遣いではなく、

自分が嫌われたくないという気持ちからだったと改めて気付かされた。

「なぜ、取引額が減っているのか?」

という問いに元上司がきちんと答えられなかった時点で迷う時間はなかったはずだ。

仕入先の担当者は代わってしまうが、

元上司を〝説得する〝〝納得してもらう〝ためにも

必ずこの取引を復活させると心に決めている。