「共感」心書vol.25

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取引先の社長が約5ヶ月前に亡くなっていたことがわかった。

正式に発表される前に情報を得て、

会社に相談し、担当者である部下と私でヒアリングに伺った。


取引先に着くと、亡くなられた社長の奥様であり、

先先代のご令嬢でもある新社長が迎えてくださった。

約75分にわたる面談中、新社長は60分近くは泣いていらした。

担当者である部下ももらい泣きし、

面談室にいる3人中2人がずっと泣いているような状況だった。

お話はほとんどが前社長の闘病に関することだった。


面談へ向かう道中、部下には1点だけ伝えてあった。

「女性は共感を求めている。

 特に、パートナーを亡くした状況で

 共感以外は求めていらっしゃらないと思う。

 だから、〝悲しい〝とおっしゃったら〝悲しいですね。〝、

 〝辛い〝とおっしゃったら〝辛いですか。〝

 と感情に関する言葉を重ねるように。

 それだけは忘れないで。」


共感する役は部下に任せ、ひと通りお話を伺ったら、私が話をする番だ。


「個人的なことで申し訳ありませんが、

 わたしも小さいですが事業をしている家系で育ちました。

 なので、担当の▲▲より事業をする家庭がどんな感じか、

 身をもって学んでいるつもりでおります。

 小さい頃から、お父さんはわたしたちだけのお父さんじゃないと思って育ちました。」


個人的な話をされている新社長には

あくまで個人的な話としてお話した方が良いと思った。


「あくまで個人的な話としてお話させてください。

 ▲▲から、前社長が亡くなられていたと報告をうけてから、

 『わたしならどうしたか?』

 とずっと考えながら、本日伺いました。

 前社長がご自身亡き後の事業を心配され、

 尚且つ、従業員の皆さんを家族として考えていらっしゃったとしたら、

 絶対に会社には迷惑をかけたくなかったと思います。

 でも、取引先の立場からすると、『なぜ5ヶ月も隠していたのか?』

 と考えます。

 されていることは、結果的に前社長の意思とは違う方向になっていないでしょうか?

 日頃から▲▲にもですが、支店のメンバーには

 私達はお取引先様のパートナーであるようにと話しております。

 『それは違う』と思うことがあれば、

 必ずお取引先様へお伝えしなさいとも話しております。

 一刻も早く、前社長が亡くなられたことを公表された方が良いと思います。」


帰社して、与信管理の部長に話した内容を伝えたら、

そこまで踏み込んだのかと驚かれた。

親子ぐらい歳の離れた役職ある方が

30代の小娘に経営に関することを言われたくないだろうと

わたしだって思う。

しかし、何も言わずに取引をやめたり、縮小することだけは避けたかった。


新社長がどう思われたか、どう受け取られたかはわからないが、

新社長にとって、お取引先様にとって、

私たちがこれからパートナーでいられるよう、

また、一から積み重ねていこうと思う。