「最上級」心書vol.30
エジプトへ留学していた頃、大学の授業で比較級と最上級の授業があった。
クラスメイトは基本的には国費留学生ばかりで、
ヨーロッパやアフリカ、アジア諸国から来ており、
恵まれた学生生活だったと思う。
先生「今日は比較級と最上級の授業をしたいと思います。
まず、例文ですが、□□はこのクラスで1番綺麗だとしましょう。
さて、▲▲、君は誰がこのクラスで1番綺麗だと思う?
実際にその人の名前をいれて、例文を読んでみるように。」
クラスメイト▲▲「▲▲はこのクラスで1番綺麗です。」
先生「??僕はこのクラスで1番綺麗だと君が思う人の名前を入れて答えるようにと言ったんだが。」
クラスメイト▲▲「先生、私は私がこのクラスで1番綺麗だと思っています。」
先生は大爆笑したが、クラスメイト▲▲は怒っていた。
クラスメイト▲▲「なぜ、先生は笑うんですか?」
先生「いやいや、悪かった。悪気はなかったんだ。じゃあ、みんなで復唱しよう。▲▲はこのクラスで1番綺麗だ。」
クラスメイト全員「▲▲がこのクラスで1番綺麗です。」
私は内心、『次当たるのは私ではありませんように。』と祈っていたが、
こういう時に私は必ず当てられる生徒だった。
先生「◯◯、じゃあ君も誰かの名前を入れて答えてくれ。」
私「▲▲がこのクラスで1番綺麗です。」
先生「?!◯◯は優しい。
僕は◯◯だって綺麗だと思うよ。
本当に▲▲で良いんだね?」
私「はい。」
その後、女子生徒全員が先生に当てられたが、
全員がクラスメイト▲▲の名前を答えた。
実際、先生が例文を出した時、私は違うクラスメイトの名前を思っていた。
そのクラスメイトはヨーロッパからの留学生で、
クラスメイトみんなでよく「綺麗だよね!」と話していた。
しかし、クラスメイト▲▲の発言により、
私は空気をよんだ。
何より驚いたのは、他の女子生徒全員が▲▲の名前を答えたことだ。
育った国が異なっても、空気をよむ、流れをよむことはあるのだと実感した。
このエピソードは私達留学生仲間の間では
語り継がれるエピソードになった。
▲▲がすごいと思ったのは、どれだけ爆笑されても、
自分が1番綺麗だと思って疑わないこと。
これは綺麗に限らず、自分のことを誇りに思えるって最強だと思った出来事だった。
▲▲ほどにはなれなくても、自分のことを少しは誇りに思えるように、
褒めてもらえたら、素直に受け入れられる自分でありたいと思う。