「社長を写真の中に入れる」心書vol.33

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エジプトでボランティアをし始めた頃、

アラビア語の先生から教えてもらった諺がある。

「◯◯の仕事は〝社長を写真の中に入れること〝がポイントよ。

 職場で上の立場になると、みんながなかなか話しかけにくくなってしまう。

 日本からボランティアがきて、周りのみんなは素直に「教えてー!」と言えても、

 役職のある人はプライドから言えなかったりする。

 そうすると仕事を進める際に、うまく申請が通らなかったり、

 協力してもらえなかったりする。

 だから、社長をしっかり写真の中に入れて、

 「あなたも私達の大切な仲間です。」

 とするときっと上手くいくわ。

 ◯◯ならきっとできるよ。」


なぜ、先生がそんな話をして下さったかと言うと、理由があった。

首都•カイロでの配属前研修があと2日になった時、

ボランティアをサポートしてくださる日本人スタッフさんに呼ばれた。

話を伺うと、配属先がモノづくりの技術がないボランティアは要らないと言ってきたとのこと。

ひとまず、予定通り配属できるように努めるが、

もし、配属されても上手くいかなかった場合は

その時に再度相談しましょうという内容だった。


もうすぐようやく配属される時で

同期のみんなですごく楽しみにしていたので、

わたしだけが要らないと言われて、すごく落ち込んだ。

そんなわたしを見た先生が話しかけてくださったのだ。


配属初日、わたしは要らないと言われないよう、

どれだけエジプトが好きでボランティアに参加したか、

どれだけエジプトに感謝しているか、

諺やジョークも駆使し、

その時つかえるアラビア語能力全てを発揮したと言っても過言ではない。

結果、しばらく様子を見てもらえることになった。


わたしは先生の諺を思い出し、

毎日、エジプト人上司のいる事務所に顔を出してから、

活動先のNGOを2箇所まわるようにした。


わたしの上司は朝ごはんを職場のみんなで食べる人だったので、

わたしもおにぎりを職場へ持って行って一緒に食べた。

そのうち、基本的には上司が朝ごはんを準備してくれることがわかり、

わたしはおにぎりを持って行くのをやめた。

朝ごはんの後は長いティータイムがあり、

8時過ぎに出勤しても、仕事の話ができるのは早くて10時からだった。

14時が定時のため、いつも時間がなかったが、

毎朝必ず上司と過ごすようにした。


長いティータイム中、わたしはいつも何か仕事をしながら、

みんなの話を聞いていた。

PCを開いている時もあれば、毛糸を玉にしている時もあった。


約2年間、ボランティアとして働いた後、

エジプト人の上司がかけてくれた言葉が

わたしの苦労を忘れさせてくれた。

「◯◯から学んだ1番のことは、時間を大切につかうこと。

 彼女はいつも小さな仕事を持ち歩いていて、

 我が家へご飯にきた時も、合間合間に毛糸を玉にしたり、

 ノートに何かメモしたり、ボーっとすることがない。

 小さな積み重ねだが、その積み重ねが2年間積もって

 わたし達の職場の意識は変わったと思う。」


今、私は日本で働いている。

しかしながら、させてもらっている仕事は今も変わらず

〝社長(上司)を写真の中に入れること〝だと思う。

自分の仕事に上司を巻き込んで、同じ気持ちになってもらえたら、

仕事をよりスムーズに進められる。


今年度から責任者にさせてもらった案件は

引き継いだ時点でかなりの不良在庫を抱えていた。

在庫を減らすこと、新たに仕入れる商品で利益を確保すること、

最終的には黒字で決算を迎えることを求められている。

不良在庫を販売するタイミングが1番難しい。

タイミングを逃すと赤字の額が増えてしまう。


イムリーに得意先と話ができるよう、

また、仕入先からの新たな提案にもこたえられるよう、

上司との打ち合わせは密に行っている。


国が違っても、仕事をする上で大事なポイントは一緒だったりすることを

気づかせてもらった。