「サプライズ」心書vol.36

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エジプトでボランティアとして働いていた頃、

両親が一度遊びに来てくれた。

同僚達にも伝え、遊びに来てくれる時は

普段なら着ない水着を着て、海へ遊びに行きたいことも伝えて楽しみにしていた。


母に、服のプレゼントをしたくて、

職場で1番上手な同僚にお願いし、

レース編みのカーディガンを用意していた。


両親が職場訪問した日はどの職場も大歓迎してくれた。

朝から両親もずっと食べっぱなしで、大変だったと思う。

頼んでいたレース編みのカーディガンをつくってくれた同僚から受け取り、

みんなに母が着たところをみてもらった。


「いくらか?」

と同僚に聞いたが、

「両親が日本へ帰って落ち着いてからで良いよ。」

と言われた。

レース編みの商品は糸の重さで決まることになっていたので、

つくってみなければ大体の価格がわからない。

そんな事情もあり、

「わかった。ありがとう。」

と伝えたが、大体4.000円ぐらいかな?と思っていた。


両親は同僚達にたくさんお土産を持ってきてくれた。

100均がほとんどだったが、かなりの数で大変だったと思う。

配りきれなかったお土産は後日、私から同僚へ渡した。


翌日、レース編みのカーディガンのお金を払おうとした時、

サプライズがあった。

同僚みんなで少しずつ出し合って払ったから、

代金は要らないというのだ。

平均月収が13,000円の世界で、4,000円は大金だ。

アラブ革命で観光客が減り、旦那さんの収入が減ったといつもみんな話していた。

そんな彼女達に負担をかけられない。

私が頼んだのだからと伝えたが、

頑なに代金は受け取ってもらえなかった。


私がポロポロとあまりに泣くものだから、

みんなどうしたら良いのか困っていた。

「みんなで出し合ったから、1人当たりの負担は大したことないのよ。

 ◯◯のご両親は2年近くも◯◯と離れて寂しかっただろうに、

 会ったこともない私達にたくさんお土産を買ってきてくれた。

 私達も何か気持ちを表したかったのよ。」

と同僚の1人が言った。

そして、レース編みのカーディガンをつくってくれた同僚が

「◯◯、泣くのは悲しい時だけよ。」

と言って笑った。


「帰国する日まで、わたし、全力でがんばるね!」

と伝えて、有り難く受け取ることにした。

わたしが泣くだなんて、みんな本当に驚いたらしく、

このエピソードは繰り返し同僚達の間で話されることとなった。


私がみんなの力になりたいと思って頑張っていても、

結果、私がみんなに支えてもらっていると

改めて気付かされたサプライズだった。

8年以上前の話だが、今も母はそのカーディガンを大事に着てくれている。