「共通点」心書vol.41

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エジプトにいた頃、毎日のように同僚のお家でご飯をご馳走になった。

お呼ばれする時は何か手土産を買っていくのだが、

定番はアラブ菓子だった。

わたしはどうしても甘い甘いアラブ菓子が苦手で、

いつも代わりにフルーツやスナック菓子を買って持って行った。


お呼ばれすると、必ずお皿に大量の料理を取り分けてくれる。

「わたし、こんなに食べられないから。

 もったいないし、減らして。」

と伝えても、

「多かったら残してくれたら良いから。」

と言われて終わってしまう。

〝お客様にお腹いっぱい食べてもらう〝という文化が根付いており、

毎回、家庭料理をお腹いっぱい食べさせてもらっていた。


エジプト人上司のお家にお呼ばれした時、

わたしはいつものように言った。

「食べれる量だけ自分で取ります。

 残すともったいないので。

 全種類必ずひと口以上食べます。」

すると、

「◯◯、それはなぜなの?」

と思い掛けず、理由を聞かれたので驚いた。

日本では多くの人が食べ物や生き物、植物にも命が宿っていると教えられ、信じていること、

だから、命を粗末にしてはいけないので、

ご飯は残してはいけないと話した。

また、毎日ご飯が食べられない人が世界中にたくさんいるのに

食べ物を捨てるだなんて出来ないと続けて伝えた。


「それが◯◯の信じる教えなのね。

 素晴らしいわ。」

と、エジプト人上司は驚いた顔をした後に言ってくれた。

てっきり、否定的な考えを言われるかと思っていたので

拍子抜けしたが、エジプト人上司曰く、イスラム教の教えにも

〝食べ物を粗末にしてはいけない〝と書かれているそうだ。

「神様は違っても、教えは一緒なのね。

 素晴らしいわ。」

と言い、エジプト人上司はとても感動した様子だった。


次の日、職場で朝食が始まると、エジプト人上司が前日の食事の話をし始めた。

上司いわく、わたしは日本人でイスラム教徒ではないけど、

従っている教えはイスラム教に共通している点があり、

違う神様だけど、わたしの信じる神様も尊重するべきだということだった。

その日以来、わたしは職場で大量の食べ物を無理矢理食べなくて済むようになった。


わたしは心からエジプト人上司を好きになった。

エジプト人上司は彼女とわたしが違うところを数えるのではなく、

「違うように見えるけど、こんなところも一緒じゃない!」

と共通点を探してくれた。

きっと違うところの方が多かったと思うが、

それでも共通点を見つけては、驚いた顔をして、

「一緒よ。素晴らしいわ。」

と言ってくれた彼女を尊敬している。

どれだけ違う環境で育っても、共通点は見つかり、

そこから分り合い、近い関係になれると学ばせてもらった。


エジプト人上司からわたしに家庭料理を教えたいと言ってもらい、

何度かお家で料理を教えてもらった。

彼女いわく

「家庭料理の味は母親から娘へ引き継がれるものだから。」

とのこと。

そんなところも日本と同じだと2人で笑い合ったことが懐かしい。