「豊かさ」心書vol.43
エジプトには聴覚障がい者の人たちが働くKFC(ケンタッキー•フライド•チキン)がある。
最初に存在を知ったのはエジプト留学中だった。
その当時住んでいたアパートから徒歩20分程の位置にあり、
なんとエジプトで最初に借りた部屋から徒歩5分の場所だった。
実はわたしはケンタッキーが大好きだ。
学生時代に陸上をしていたので、頻度は多くないが、
わたしが自ら望んで食べる数少ないファーストフードだ。
そんなこともあり、そのケンタッキーへもちろん行った。
わたしにとって、ファーストフードに静かなイメージはない。
しかし、そのケンタッキーは静かで穏やかな雰囲気だった。
メニューを選ぶのも、テイクアウトか店内で食べるかも
メニュー表に書かれている文字やマークを指差せば注文ができる。
壁には手話の絵が描かれていたのも印象的だった。
静かだが、店員の皆さんが笑顔で接客してくれ、
とても和やかな、温かい空気が流れていた。
エジプトにももちろん様々な障がいを抱えた人がいる。
置かれている環境は千差満別だ。
障がい者が家族にいるのを隠したいがために、
外へ全く出さない家族もいると聞く。
日本で障がい者の人たちが接客をしている大手ファーストフードを見かけたことがわたしはない。
インターネットで調べてみるとタイにも同じく聴覚障がい者の人たちが働くケンタッキーがあるようだ。
エジプトで働いていた頃に学んだことは
経済的に成熟していると言われている日本が
所謂、経済的に発展途上の国から学ぶことはたくさんあるということだ。
カイロにあるそのケンタッキーで働いている聴覚障がい者の方々は
みんな良い笑顔をされていた。
こちらが何だか幸せな気持ちになるぐらい。
普段ならイライラする様なことも、
イライラ自体が起きないような穏やかな空気が流れているのだ。
『〝豊かさ〝ってなんだろうか?』
と考えさせられた出来事の1つだった。