「武器」心書vol.46

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「◯◯はそのしょぼい武器でたたかうつもり?」

中間管理職になって少しした頃、他部署の部長から言われた言葉だ。

しょぼい武器=部下がしょぼいという意味らしい。

当時、とても悔しかったことは忘れられない。


「◯◯は部下に優先順位をつけへんからあかんねん。

 優秀な部下の仕事は優先して確認、承認して、

 できない部下の仕事は後回しにするべき。

 まっ◯◯の部下は出来ないやつばかりやから優先順位もないんか。」

これもきつかった。

その時、私の部署はその部長の部署より成績が芳しくなかった。

言い返しても、結局は結果が出なければ、認めてもらえないと思った。


私はできるだけ全員に対して平等に対応したいと思っていた。

常々心掛けていたし、部下が出してきた書類は

基本的には提出してきた順番に確認するようにしていた。

「それだから成績が上がらないんだ。」

と言われても、変えたくない気持ちが強かった。


中間管理職になるよりも前、私には暗黒時代がある。

当時の上司と気が合わず、私の出す書類がことごとく通らなかったり、

後回しにされることがあった。

『私の書き方がいけないんだ。』

とずっと思っていたが、上司が本社へ出張時に

「◯◯の書類は絶対に通さない。

 気に入らないから。」

といつも話していると聞き、

『世の中にはそんな人がいるんだ。』

とショックだった。

そんな経験から、承認は出来るだけ平等にしたいという思いがあった。


『結果を出さないと。』

と焦れば焦るほど上手くいかないものだ。

30代前半で中間管理職になって、部下はみんな15歳以上年上。

なかなか上司として認めてもらえない中、

成績を上げないといけないプレッシャーでギスギスしていた。

そんな時、当時の上司にはよく話を聞いてもらっていた。


ソリが合わなかった上司の後、新しく上司になったのは

全く別の事業部を統括している上司だった。

新しい上司は前々任者から

「ひとまず◯◯さんの話を聞いてあげて欲しい。

 色んなことがあったし、近くに話ができる上司がいた方が心強いと思うから。」

と言われていたらしく、よく色々な話をした。

新しい上司は業界のことには詳しくなかったが、

求心力のある人だった。


「若いからこそ、なかなか受け入れてもらえないとは思う。

 でも、◯◯さんには新しい上司像をつくってもらいたい。

 錆びている剣だって磨けば、新品とは違う良さがあります。

 自分の武器を信じて手間暇かけて磨き続けてください。」

新しい上司はなかなか上がらない数字に対して

いつも会議で謝ってくれていた。

申し訳なかったが、新しい上司から

「3年間は自分が後ろ盾になって、見守るから。」

と言われていたので甘えることにした。


〝しょぼい〝と言われてしまった部下たちだが、

私にとっては掛け替えのない部下たちだ。

結果を出すために、部下たちとの同行や面談を増やした。

自分の担当先も増えたままだったので、かなりきつかった。

始発の出社や出張は週1以上あったし、

夜の会食は週3以上あり、

『限界だな。』

と何度も思った。


根底にあったのは〝誰一人、離脱させないこと〝だ。

そのためにも利益を上げないといけないと必死だった。

2年目、私の部署は3拠点の中で1番利益を上げた。

それ以降、他の部署からは何も言われなくなった。

今年は3年目。

残念ながら上司は変わってしまったが、

あの時頂いた言葉を忘れず、

自分の武器は大切に、磨き続けたいと思う。