「ジェンダー」心書vol.47

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「◯◯、日本の企業には女性の営業マンはいないのか?

 今まで◯◯以外に日本から女性の営業マンはきたことがない。」

入社して最初に担当させてもらった海外取引のメインは中国だった。

当時は中国へ年に3-4回出張していた。

最初は中国のみだったが、他の仕入れ先を開拓できたこともあり、

途中からは台湾から入って、中国、東南アジアをまわってから帰国するルートで出張していた。


入社して初めて輸入した仕入先の担当者とは

たまたま同じ誕生日だったこともあり、

色々な話をざっくばらんにさせてもらっていた。

ある日、その担当者から聞かれた質問がはじめの内容だ。


私も初めて海外出張する時は事前に上司と面談があった。

中国語が出来ない20代の私を1人で海外出張させるのはいかがなものか

と、社内で意見が分かれたらしい。

「私は◯◯さんがどうしたいかが1番大事だと思う。

 1人で行くのが怖いなら、誰か男性社員をつけることも出来る。

 どう思ってる?」

上司からそう聞かれて、私は迷わずに

「1人で行ってみたいです。」

と答えた。

「何かあれば自分が責任をとります。」

と上司が社内を説得してくれ、私は1人で海外出張できることになった。


1人で海外出張すると女性だから助かることも感じた。

例えば、必ず送り迎えを手配してもらえることは助かった。

たまにタクシーに乗って仕入先へ行くことがあったが、

乗る前に仕入先の人へ電話し、

タクシーの車番から運転手さんの身分証などの情報をチェック、

移動中も5分に1回はメールか、電話がくる。

私は中国語の通訳をお願いしていなかったので

お取引先の方には心配をかけていたのだと思う。


「なぜ、通訳をつけないのか?

 日本の商社マンの多くは英語ができても

 必ず通訳をつけてやってくるよ。」

と聞かれたこともある。

幸いにもお取引先の方々は海外留学の経験がある方も多く、

英語が堪能な方も少なくなかった。

「お互い外国語にはなるけど、英語が話せるから。

 私が話した内容や思いをきちんと通訳してもらえるか分からないのなら、

 拙くとも自分が話した方が理解し合えると思って。」

と、いつも答えていた。

少し中国語を覚えたが、お遊び程度でビジネスには全くつかえない。

夏休みを利用し、1週間、上海へ中国語を勉強しに行ったことは

お取引先の方々を驚かせたようで、

その後訪問した際、少なからず進歩した私の中国語を褒めてくださった。


1人で私が海外出張できるのは上司のお陰なので、

少なからず安全に帰ることだけは守らないといけないと思っている。

そのため、夜は日本から持ち込んだカップラーメンをホテルで食べることも少なくない。

プライベートな旅行なら、夜もふらっと出かけて外食するだろう。

出張中に何かトラブルに巻き込まれたら、

私の後に女性社員が海外出張しにくい環境になるかもしれないと考えると

夜は出かけずに、ホテルでゆっくりするようにしている。


出張中、トイレにドアがなかったり、清潔ではなかったり、不便なこともあるが、

男性でも同じなのではないか?と思っている。

知り合いの男性は、海外の空港のトイレで痴漢にあったと話していた。

これからは男性だから、女性だから、安全だとは限らなくなるかもしれない。

いつか〝日本から女性の営業マンは来たことがない〝というのが

遠い過去だと言われる日がきたら良いなと思っている。