「伝わる」心書vol.59

f:id:Nabila:20210214230624j:plain

「相手を思って話した内容なら

 どれだけ行き違いがあったとしても  

 いつかは気持ちが届くはず。

 そんな時は絶対に守りに入らないこと。

 少しでも保身から何かを言えば、

 それ以外が全て相手を思った内容でも

 一瞬で意味がなくなる。

 とにかく、自分の立場は考えず、

 相手のことを思って話しなさい。」


顧問の1人からもらったアドバイスだ。

当時、私は裁判を抱えていた。

当社が仕入先を訴えたのだが、

証拠集めなどがうまくいかず、

最終的には示談することになった。

裁判の過程で、事件当初の営業本部長が退職したり、

仕入先との交渉を全面的に担っていた部長が逃げ腰になったりで、

結局は販売先の担当であった私が矢面に立つことになった。


販売先の社長に経緯を説明に伺う際、

顧問からもう一度、最初の話をもらった。

どう考えても当社の対応が甘かった。

結果、お得意先様には多大なるご迷惑をおかけした。


「あんたは今日何か決めて帰らなあかんのか?」

ことの経緯を説明した後、得意先の社長に聞かれた。

「そういうことではないのですが、

 しかしながら御社にこれ以上ご迷惑もお掛け出来ません。

 悔しいことに私には権限はありません。

 しかしながら、御社のご希望をお聞かせ頂けましたら、

 担当として、最大限努力いたします。」

私は自分の思いを伝えた。


「わしはこの件には触れない。

 だから、あんたがいつか「これでどうですか?」って言いにくる日を待つ。」

社長からそう言って頂いた時、

私はその責任の重さを感じたと同時に

拗れて、出禁になるんではないかと心配していた気持ちが少し楽になった。


「あんたにとって良い経験になったやろ?

 詰めが甘いところがあったのも事実や。

 でも、この失敗を必ず活かすんやで。」

社長はそうおっしゃって、私に対して全く声を荒げられなかった。


帰り道、顧問から

「あなたが自分の立場を顧みず、

 「社長の希望を教えて欲しい!」

 と言った気持ちが届いたんや。」

と言葉をもらった。


その日以来、今まで以上に相手の立場を思って話すように心がけている。

また、いつか社長に恩返しできる日まで

私は絶対に諦めないと決めている。