「夫の家業」心書vol.69

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「後継者がいなかったり、事業の先行きに悩む日本の中小企業は少なくないと思っている。 

 双方にメリットが見出せれば、今後も積極的に事業提携やM & Aしていきたい。」

とあるメディアのインタビューを受けた際の夫の言葉だ。


夫には継ぐ予定だった家業がある。

結婚する際、その地方に住む友人に夫の名字を伝えたところ、

「こっちには有名な▲▲っていう▫︎▫︎屋さんがあるけど、

 変わった名字だね。」

と言われた。

その地方では、認知度が低くないようだ。


世間の夫のイメージは決して良くない。

まだ引退するには若いオーナー社長から経営を引き継いだことや

強引だと思われても仕方のない人事や経営手腕から

色んな噂をされてきた。

確かに若い頃は今よりずっと尖っていたのだと思う。

私も夫のことをずっと怖い人だと思ってきた。


この4連休、初めて夫の実家へお邪魔した。

妹さん達が医療従事者ということや

コロナ感染者数がかなり少ない地域ということもあり、

今まではZoomでしか会ったことがなかった

お義父さんとお義母さん、妹さんとガラス戸越しに会った。


お義父さん、お義母さんは思っていたよりもずっとお元気そうで安心したが、

老化を感じずにはいられなかった。

ご両親の衰えとは相関せず、

家業の跡継ぎは決まっていない。


夫と話していると気付くことが多々ある。

1つは夫にとって〝働くこと〝の根本は故郷にあるということだ。

「小さい頃、お母さんにおんぶされて、

 売掛金の回収へ行った。

 売るだけではなく、代金を頂くまでが商売だと

 両親の背中をみて学んだ。」

と話す夫は、楽しそうだ。


跡継ぎが決まらない家業に思いを寄せる行動の1つが

今携わる会社での事業提携や事業買収なんだと結婚して気付かされた。

夫にとって、それは悪なのではなく、

あくまでその会社がもつ技術を世に残すための手段なのだ。


いつまでも夫の家業がみんなに愛され続ける方法が見つかれば良いなと

実家へお邪魔して改めて思った。

それをきっと夫は心から望んでいると思う。