「義父」心書vol.81

 

「◯◯さんがお嫁に来てくれて

 ▲▲(夫)も喜んじょりますが、

 わしも喜んじょります。

 本当にありがとうございます。」

 

思い切って夫婦で購入した新居へ引越しして10日後。

わたしの両親を新居へ招待した日、

初めて義父とわたしの父が話をした。

義父は我が父へ感謝の気持ちを伝えてくれた。

まさかそれが最後の会話になるとは思っていなかった。

 

義父が亡くなった。

自分の孫とさほど年齢の変わらない相手が

息子の3度目の結婚相手だとは義父も想像しなかったであろう。

それにもかかわらず、義父はいつも優しく、

わたしの家族の体調を気にしてくれた。

孫みたいな年齢のわたしに、叱る気持ちもなかったのかもしれないが、

義父と話す時間がわたしは好きだった。

 

亡くなった日、朝から娘2人に電話をしたが、繋がらなかったようだ。

留守番に入っていた声があまりに辛そうだったからと

午後から娘(義妹)2人で施設へ様子を見に行ってくれた。

義父の部屋を覗いたら、苦しそうだが、呼吸はしていたとのこと。

施設の看護師さんと打ち合わせを5分程した後、

再度、部屋を覗いたら、もう息を引き取っていたとのことだった。

施設に入った6日後だった。

 

義父は16年前に末期の胃癌にかかり、

余命宣告をされた。

しかし、奇跡的な快復をみせ、完治させた。

夫の家族いわく、末期の癌患者には見えなかったとのことだ。

同部屋の方々が次々亡くなる中で義父は言ったそうだ。

「そりゃ、みんな、『もう無理だ。無理だ。』とばかり言っているからだ。

 『死ぬ。死ぬ。』と言っていたら、死ぬだろう。

 わしは死なんからな。」

 

〝病は気から〝

正にそれを体現したのが義父の人生だった。

 

身近な人が亡くなり、気が弱くなってしまった義父。

もっといろいろな話をしてみたかった。

 

お義父さん、辛い事が続いて、さすがにこたえますが、

気持ちだけは強くもって、▲▲さんと夫婦で前へ進みます。