「勝負服」心書vol.10

私には勝負服が何着かある。

大型の契約を決めるぞという時、そのお礼にお伺いする時、

部下の同行で役職者として訪問する時などに着る服だ。

決算書をお預かりする時、苦手な方にお会いする時にも着るので、

勝負服が続く時はローテーションしながら1週間を過ごす。


上司から他部署の若手女性営業がキャリアアップを目指していると聞き、久しぶりにランチに誘った。

その際、「最近どう?」と聞いたら色んな話が出てきた。

「若手はみんな今後どれぐらい給料が増えるか不安だと話をしています。」

「先々が不安です。」

「◯◯さんはどこまでキャリアアップを目指していますか?」


若手の社員と接すると感じるのが、

漠然とした将来に対する不安だ。

あと何年勤めたら、どれぐらい給料が上がるのか、

役職者になるにはどんな条件をクリアしないといけないのかなど

なかなかすっきりと答えられない内容が多い。

どうしたら不安をやる気に変えられるのかと常々考える。


春先に、若手役職者全員に勤め先の社長からオーダースーツがプレゼントされた。

良いスーツの1着ぐらい持っているようにとのことだったが、

驚いたのはそのスーツを着ていった日である。

80%ぐらいの人達が

「そのスーツ似合っています!」

「おしゃれですね!」

と声をかけてきてくれた。

そのスーツがどんなスーツかはみんな知らない。


後日、ランチへ誘った彼女と同行時にそのスーツを着て行ったら

彼女からは

「スーツ、珍しいですね。」

と言われた。

「今日は苦手なお客さん対応があったから気合いいれてきた!」

と返した。


私が課長になった時、社長から

「リュックは禁止。

    良いかばんを持ちなさい。」

「役職が変われば、確実に周りの見る目が変わる。」

と言われたことを思い出した。

その当時、役職が変わったからと言って、

良いものを持つということに若干の抵抗があったが、

社長から直接言われたことなので、直ぐにかばんを買い替えた。

その後、私は着るものや持つものにどんどん無頓着になってきていたが、

みんな見ているんだなと思った出来事だった。


明日、中途採用の新入社員が入ってくる。

もちろん勝負服で迎えるつもりだ。