「ことば」心書vol.16
エジプトへ留学する前、私は全くアラビア語が話せなかった。
大学での授業についていけなかったこともあり、
早朝に語学学校へ通っていた。
でも、なかなか上手くならない。
語学学校では落ちこぼれで、進級テストに合格しないであろう生徒の1人だった。
(大学では授業であてられても、
隣の席の留学生に答えを教えてもらうことばかりだった。)
毎日、授業前にある小テストに答えられず、
授業中立たされていたから否定はできない。
先生に
「なぜ、日本人なのに勉強ができないのか!?」
とアラビア語で言われるも、言い返せず、悔しい思いをした。
大量の宿題と予習が終わらず、
語学学校へ通うバスの中で予習をする毎日。
疲れてバスの中で眠ってしまうこともよくあった。
授業はとても辛かったが、色んな国からきている留学生と話すことはすごく楽しかった。
ある日、インドネシア人とマレーシア人の留学生が共同生活するお家にお邪魔した。
共通言語はアラビア語と英語。
みんなが英語を話せるわけではないので、
英語が話せない留学生とはアラビア語を駆使するしかなかった。
当時、拙いアラビア語で一生懸命話をしたが、
きちんと伝わらない部分もあったと思う。
仲良くしてくれていた留学生が途中でサポートしてくれた。
帰り際、1人の留学生からアラビア語で言われた。
「◯◯はきっとアラビア語が上手くなるよ。
僕は確信している。
なぜなら、一生懸命伝えようとして諦めないから。
大体の人は途中で諦めて英語で通訳してもらう。
だから、諦めずに頑張って。」
初めて、「アラビア語が上手くなる。」と言ってもらい、
すごく嬉しかったことを覚えている。
二度のエジプト滞在を経て、アラビア語は上達したと思っている。
でも、1番大切なのはハートで、
相手に伝えようとする気持ちと相手を分かりたいと思う気持ちだと彼の言葉を思い出す度に思う。
それは母国語の日本語も一緒だと思う。
伝えたい、分かりたいという気持ちを忘れずに言葉をつかいたい。