「おふくろの味」心書vol.60
東京出張時におば(母の従兄弟)の家に寄った。
日帰りだったので、おばからきた
「晩御飯食べる時間ある?」
というメールに
「日帰りなので難しいと思う。」
と返した。
おばは森永ヒ素ミルク事件の被害者で
その後遺症でカラダが思うように動かない。
わたしが20代の頃はまだ元気で、
おばと美術館へ行ったり、買い物へ行ったりした思い出がある。
また、おばの手料理はどれも美味しくて、
いつもどんなご飯が出てくるか楽しみだった。
昨年5月におじが癌で亡くなり、
49日の前日にお邪魔してから随分と空いてしまった。
コロナ前は東京出張の度に少し顔を出したりもできたが、
今は出張もほとんどなく、コロナもあり、なかなか会えない。
夕方、仕事を終えて、おばの家に着くと良いかおりがした。
おばが1日かけてご飯を準備してくれていたのだ。
久しぶりのおばの手料理に疲れが吹っ飛ぶのを感じた。
「◯◯ちゃんに褒めてもらいたくて、
1日かけて準備したの。
味は大丈夫かしら?」
と、ご飯を頬張るわたしに、おばが尋ねた。
「おばちゃんの手料理がまた食べられるなんて、
正直考えていなかった。
おじちゃんが生きていた頃、
「次来た時、なに食べたい?」
って聞かれたことあったよね。
「おばちゃんのシュウマイが久しぶりに食べたい。」
と答えたら、おばちゃんに作り方を聞きながら準備して待ってくれていた。
おじちゃんの作ってくれたシュウマイも美味しかった。
でも、やっぱりおばちゃんのシュウマイとは違う味やった。
またおばちゃんのシュウマイが食べられると思ったら嬉しい。」
おばは嬉しそうな顔をして、
最近ハマって作っている料理の話をしてくれた。
おばが嬉しそうな顔をしてくれると
わたしも嬉しい気持ちになる。
東京の母の味が戻ってきてくれて嬉しい。
亡くなったおじにも食べてもらいたい。