「旅立ち」心書vol.78

「あんたはあんた流でいきなはれ。」

 

自分の祖父のように親しくして頂いていたおじいちゃんが

先週末亡くなられた。

次の日、夫とお見舞いに伺う予定がかなわなかった。

 

おじいちゃんとは今の職場で出会った。

最初はそこまで親しくして頂いた訳ではなかった。

入社から半年程して、先輩社員が退職、

おじいちゃんが懇意にしていた取引先のほとんどを

私が営業担当になったことがきっかけで

一気に距離が近くなった。

 

一緒にあちこちへ出張したことはもちろん、

フランス料理を食べに連れて行ってもらったこと、

後に上司となる人と上手くいかなくて悩んでいた時に力になってくれたこと、

初めてドイツ出張へ行く時はお小遣いをもらい、

好物だというドイツのソーセージを買って帰ってきたらすごく喜んでくれたこと、

結婚の報告をした時のことなど、

どの思い出も1番とは決められないぐらい

楽しい時間を過ごさせてもらった。

 

引退されてからの方が密なお付き合いを頂き、

本当におじいちゃんと孫の様な関係だと感じていた。

仕事のことで相談すると、いつも最初の言葉を言ってくれた。

 

「あんた流でいきなはれ。

 途中で中途半端に流派を変えたらややこしくなる。

 あんたが良いと思った方を突き進んだら良いんや。

 大丈夫や。うまくいく。」

 

そう言ってくれたおじいちゃんはもういない。

亡くなる直前、だんだん弱くなってきて

電話がかかってきて、折り返してもなかなか話せなかった。

最後の会話は「鰻なら食べる。」だった。

鰻好きのおじいちゃんらしい最後の会話だった。

 

おじいちゃんは自分が亡くなった後、

1人になってしまう奥様をずっと心配していた。

「自分が亡くなったら、▲▲さん、■■さん、、、へ連絡して欲しい。

 後、家内のこと、よろしくお願いします。」

おじいちゃんの口癖だった。

 

奥様にはおじいちゃんが見ることがでかなかった景色、時代をたくさん見て頂いて、

あちらの世界で再会される際に自慢して頂けるようにしたい。

昨晩、出張先からかけた電話で、奥様とそんな話をした。

 

安心してください。

でも、これからも見守っていてください。