「熱量」心書vol.79
「私達から何回説明しても社長を説得出来ませんでした。
来週、直接、うちの社長を説得しにきてください。
社長が納得するような表現でお願いします。」
3年前、とあるお取引先さんへ仕入先の方と訪問した。
取引先社長「メーカーに女性営業って珍しいですね。
どういったつもりなんでしょう?
御社では女性でもメーカー営業ができるというお考えなんでしょうね。」
嫌な予感が的中した。
仕入先の方からそのお取引先さんへ連れて行って欲しいと頼まれた際、
なんとなく、どうにか行かずに済ませたいという思いに駆られて
「アポの調整が出来なかった。」
と何度かお伝えし、先延ばしにしていた。
〝どうしても訪問してみたい〝という思いに私は根負けした。
社長の言葉に対して先方の取締役はじめ、同席された方々は
何にもおっしゃる雰囲気がなかった。
私「社長、すみません!
私に色々と至らないところがあって、
女性営業に先入観をもたれてしまったなら、申し訳ありません。
がんばります。」
と、咄嗟に言った。
面談が終わった帰り道、私は仕入先の方に改めて謝った。
私「嫌な思いをさせてしまい、申し訳ありません。」
仕入先の方「◯◯さんは何にも悪くないじゃない。
気にしていないから。色々な人がいるよね。
なんだかケーキが食べたいんだけど、お茶する時間ある?」
そのお取引先さんへ訪問する前、同業者のお取引さんへも訪問した。
仕入先の方がまだ営業になられて日が浅く、
〝是非、自社の商品を使ってくださっているお客様を勉強させてもらいたい〝
とのことで、工場見学のお願いがあった。
3社中2社が快く工場見学をさせてくださった。
お断りを受けた1社が今回のお取引先さんだった。
仕入先の方「それぞれの会社の方針があられるから仕方ないわよ。
色々とありがとうね。」
そんなことがあってから、そのお取引先さんに対する仕入先の方の対応は変わってしまった。
他へ販売できても、そのお取引先さんへは販売ができない製品もでてきた。
また、販売価格の見直しの話も何度か出た。
反対に、工場見学させてくださったお取引先さんが困った時は
直ぐに手を差し伸べてくださった。
それは仕入先のご担当者が変わられても変わらない。
今回、購入予定の数量を大幅に減らしたいという話がお取引先さんからあった。
当社の担当者から何度も話してもらった。
今の価格を維持できなくなる可能性があることも念押ししてもらった。
しかし、お取引先の取締役から「むしろ、僕の話聞いてる?」
と言われたと担当者から報告があった。
結果、お取引先さんから私へ何度も電話があった。
取引先取締役「やっぱり□□さんは(外国人だから)話が通じなくて大変や。」
と開口一番おっしゃった。
しかし、話を聞いていくと、お取引先さんが都合の悪いことは
全部忘れていることがよく分かった。
私「うちの□□はその前提があってお話させて頂いているので、
本当にこんなことを仕入先へ伝えて大丈夫かな?
と、心配して、何度もお話させて頂いております。」
と伝えた。
すると、冒頭の通り、会社へ来て説明して欲しいとのことだった。
担当者からは「このままいけば、会社が倒産するということまで電話で言われました。」
と報告があった。
与信管理をしなければならない立場からすると最悪だ。
お取引先の社長との面談と並行し、各所に根回しをし、
どうにか当初の予定数量に近い形で決着した。
伝え方は難しいと改めて考えさせられた。
『うちの会社もそんなことが起きるかもしれない。
ダメなことはダムだと、上に言わないといけない場面は
これからもあるだろう。
また、相手の立場にたって言葉を選ばないといけない。
どんな相手だって感情はある。
無駄に嫌われる必要はない。』
私は与信は相手に対する熱量に近いのかも知れないと思うことがある。
お取引先さんがいつ気付いてくださるかは不明だが、
当社の熱量がここ数年で冷めてしまったのは事実だ。
どういったお付き合いをさせて頂くか、よく考えていきたい。